カレーパン先生の ブログ
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関東方面珍道中⑬
2014.11/29 (Sat)
三遊亭右女助「出札口」。出札口は、改札口といった方がわかりやすいか。
私の大好きな、鉄道を題材にした創作落語である。
まだ、自動券売機など無く、窓口で「~まで1枚」とか言って切符を買う時代。
改札では駅員が「改札鋏」を得意げにカチカチ空打ちしながら、客の差し出す切符に鋏を入れていく。
改札口付近では、切符の切りかすが散乱する。
改札も自動が当然、定期を含め多くの人が電子マネーを持つようになった現在。
一昔前の懐かしい光景は、知らない人の方が多くなって行くのだろう。
出札口。
この落語は、そんな時代に作られた話である。
東京駅に、とある男性客が切符を買いに来るのだが、この男性、なんと自分の行き先がわからないという設定だ。
この客、駅の名前を端から順にトントントンと言ってくれ、言われたら思い出すから、と駅員に迫る。
駅員は仕方なく、東海道本線を東京の隣「有楽町」から「新橋」、「浜松町」…と言い始める。
ドンドン進み、神戸まで言うと、
「神戸じゃないんですか?」「ええ、神戸じゃないんです。」
「東海道はそれで終わりです。」「恐れ入ります、その先をずーっと。」というやりとりののち、「それでは神戸を出ます。」ということで、山陽本線に突入する。
この落語のフルバージョンは、さらに進んでいく。
下関まで進むと、「山陽本線はそれで終わりです。」となり、海を渡って鹿児島本線へ。
終着の鹿児島まで行き、「鹿児島じゃないんですか?」「ええ、鹿児島じゃないんです。」
「鹿児島本線それで終わりです。」「恐れ入ります、その先をずーっと。」
「その先は、沖縄から台湾ですよ。」「台湾?台湾じゃなかった気がする。じゃ、反対方向かな?」
「冗談じゃない、反対方向はあなた、東北本線ですよ。」「東北?よし東北本線一丁行こう!!」
東北本線は上野から青森まで行く。
このとき、東京から始めないで、きっちり東北本線の始発上野から始めるのは、ちょっとしたポイントか。
青森のあとは、海を越えて北海道にわたり、北端の稚内まで行く。
「稚内じゃないんですか?」「ええ、お手数掛けました。稚内じゃないんです。」
「冗談じゃない。」
「これ以上詳しく駅名を言うのには、東京の隣神田から言っていくしか手がないんです。」
「うわぁ、その神田1枚!!」…という話のオチ。
この音源、ライブ収録のため、所々客が思わず拍手をする場面が聞き取れる。
右女助師匠の記憶力に感心してのものだろう。
特に、北海道は駅名が難しく、覚えるのも大変、しゃべるのも発音というか滑舌というか、大変そう。
泣きを入れながら、駅名を羅列していくこの場面で、この話の盛り上がりは最高潮に達する。
当時はまだ「国鉄」である。
その頃よりも、現在はずいぶん駅が増えている。
話の中に出てこない駅名があり、そのあたりに時代を感じる。
身近なところでいくと、「北長瀬」や「西川原」は、もちろん、「高島」も出てこない。
また、駅名が変わったということもわかる。
「東岡山」は、当時は「西大寺」だったようだ。
また、新幹線はまだ開通していないから、新幹線の駅名は出てこない。
「新倉敷」は「玉島」、「新山口」は「小郡」となってる。
そんなことを思いながらこの話を聴いていると、「一度、東京から在来線を乗り継いで、旅情を楽しみながら帰ってみたいなぁ。」という衝動に駆られるのであった。(続く)
